~日本が愛した宝石~

第1章






日本人は、翡翠をどのくらい知っているのだろうか。

はるか5000年も昔。翡翠文化は日本が発祥だったということ、古墳に納められた装飾品や献上品の数々…。

そんな歴史は忘れ去られ、いつしか、翡翠は一人歩きをはじめたのです―。








翡翠の名前の由来は、赤い羽という意味で、非は緋(赤)の音を、翠は緑をあらわし、「かわせみ」という鳥にちなんでつけられました。
かわせみは背が青緑で、腹が赤い鳥です。

ミャンマーで産出する翡翠には、その地域特有の赤い土に、長いあいだ埋もれていたために、石の表面が赤く染まっていることがあります。しかし、切断すると、緑色なので、その景色を「かわせみ」になぞらえたのです。







翡翠は奥が深い

翡翠はその奥深さから、宝石業界でもあまり取り扱われませんでした。それどころか、染物が高額で販売されるなど、販売者側も理解していないようでした。

しかし、近年は、ジュエリー業界も新しい商材として翡翠に注目しはじめています。それでも「翡翠は奥が深すぎて手が出しにくい…」の声は多く聞こえてきます。

つまり、専門家の中でも、翡翠は別枠の専門分野になるのですが、その奥深さと歴史といったら、翡翠だけで会社が設立できるほどです。
そして、これほど日本人と深くかかわってきた宝石はありません。なぜなら、翡翠は日本の宝石だからです。

もちろん翡翠は中国でも活躍した宝石ですが、それは、中国が彫刻がすばらしかったために、ミャンマー産の翡翠を用いて工芸品として世界に輸出していたためです。実際には、中国から本翡翠は産出されません。

日本人もみな、翡翠といえば中国と思っているようですが、日本では、古くから勾玉にされたりなど、縄文時代、古墳時代から愛用されていました。それはおよそ5000年前で、一方、中国の翡翠文化は18世紀のことです。




翡翠には2種類ある?

翡翠は大きく分けてジェダイト(硬玉)とネフライト(軟玉)に分けられます。本来ネフライトは成分が異なり、翡翠ではありませんが、姿が似ているため、翡翠として扱われてしまいました。台湾翡翠などはネフライトにあたり、そのほか中国で格安で売られているもの、また日本でも安値で販売されているものがネフライトです。

一方ジェダイトは、ミャンマーをはじめ、日本などでも産出される硬玉で、とても高価な宝石です。

この2つの見分けは困難で、市場に出てしまうと、もう分かりません。観光客相手に、ネフライトを高額で販売するケースも多々ありますので、翡翠は海外での購入はあまりオススメできないストーンです。




翡翠は鉱物ではない

翡翠がほかの宝石類と異なる大きな違いは、岩石であることです。普通、宝石のルビーやエメラルドなどは1つの大きな結晶をカットしてつくられますが、翡翠は、それらの鉱物がいくつか集まって個体を形成するため、顕微鏡でみると、「ひすい輝石」の細かい結晶がいろいろな方向に向いて緻密な塊を作っています。

しかし、それゆえに、翡翠は他の鉱物を含むことになります。

ここが翡翠の最大の特徴であり、問題でもあります。

翡翠に含まれる成分によって、さまざまな発色を生み出すかわりに、他の宝石と見分けがつきにくいこと、そしてその含有率によって、翡翠ではなくなってしまうことです。

そのほか、染めや人口物、流通名称などによって、市場は混乱しています。その見分け方が困難であるため、当店もよっぽど信頼しませんと翡翠は買い入れられません。

本来、純粋な翡翠には色がありません。他の鉱物が入りこむことによって発色するためです。人気の色合いは、氷と呼ばれる無色透明のもの、ラベンダーと、緑、そして珍しい青や黒です。ごくまれに、数年に1度、ピンクが産出することがございますが、それは幻に近いものです。

翡翠の最もすばらしい色合いは、以前はインペリアルジェイドの名称が与えられていましたが、現在では、このインペリアルジェイドを含み、コマーシャルジェイドの称号が与えられています。




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