新たな酉の市の出会い

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今年の酉の市の出会いについて
たくさんのお問い合わせをありがとうございました。

今日は皆様のリクエストにお答えしまして
いつもよりも写真を多めに使用し
誰でもご覧になれますように限定記事にしないで
ご紹介をさせていただきたいと思いますm(__)m

 

 

「あなたは誰に仕えているのですか?」

 

 

『イクグヒノカミでございますが
わらわが仕える直属の神は
タカムスビノカミでございます』

 

 

 

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去年の11月、みちひめは大きな熊手を選び、そこに降り立ちました。

 

15歳で業火に焼かれた悲運の姫です。

 

焼かれながら、自分の生まれた意味を問い

神に仕えようと決心した少女です。

この姫は現世で、ある重要な役目を果たすために降り立ったのでした。

 

 

 

 

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あれから一年が経ち、みちひめが役目を終えて
帰る時がやってきました。

 

一の酉にアメノヒワシノミコトが迎えにやってきます。

その時にみちひめも戻るのです。

 

 

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修行を終えた彼らは天に帰る3日前から
断食と瞑想を始めます。

 

その間はしゃべることもできないのですが、
帰る当日には話すことができるようになります。

 

 

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熊手を返すと、それまで10cmほどしかなかった彼らは
人間と同様に等身大になります。

 

 

「もう、お別れですね?」

 

『わらわがあなた様の
少しでもお役に立てたことを喜ばしく思います』

 

「はい。
最後に…、何か人々に伝えてあげてください」

 

『わらわのようなものが、はばかることなく申すのは
せんなきことじゃが、人はみな弱きもの。
人は、選ぶ道はあっても、逃げる道はなし。
人は、助けあって生きるもの。
故に、一人で考えることは愚かなること。

日々を嘘偽りなく、正直に死に向かって、真っ直ぐあゆむこと。
人は、すべからく死ぬものなり。

己の命を己で縮めては、天には召されぬ。
人の命は神が与えたもうたもの。
己でたつことは赦されぬ』

 

「ありがとうございます」

 

『アメノヒワシノミコトは
一の酉の宵宮の
亥の正刻に来て
酉の正刻に帰る』

 

 

みちひめは亡くなってから360年以上が経過しています。

 

この頃の日本語は今とは全く違っていて
大変言葉が難しく、聞き取りにくいものです。

 

これより古くなりますと、喋り方に抑揚があり
より難しく、能のような、または中国語のような喋り方になります。

 

私には自動的に伝わりますが
それを訳さないで書きとめてみました。

 

同じことを2回言ってもらわなければならないのですが
よろしければ、当店との最後の会話を
みちひめの言葉でお聞きください。

 

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『ひととせの、みじかきうつしよ いとをかし

とこよにて、とわに きみがこころにまかせてまたむ

うつしよのよろずのことはひとときひとときを こやすことたいせちなり』
原文ママ

 

 

※訳  1年間の短い現生だったけれど、とても楽しかったです。

異世界にて、あなた様が来られる時を私は永遠に待ち続けております。

この世の全てのことは、一時一時を楽しみながら大切にすることなのです。

 

 

 

「さようなら」

 

 

我々を取り囲む賑やかな雰囲気と
哀愁のある別れとの対比が
この夜の寂しさを助長させていました。

 

 

 

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御社殿に向かって歩いてゆく みちひめは、
やがて左手の渡殿の屋根に昇り始めます。

そこでアメノヒワシノミコトを待つのです。

 

 

 

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最後のお別れの後、軽く会釈をすると、
いつ頃からか私は次の人を探すようになっていました。

 

神の候補になる人間にはパターンがあって
そのほとんどが不幸な運命を抱えていました。

もう人間に生まれたいとは思えないほど
悲運か孤独なことが多く、それが神に近づきたいという
原動力になっているように感じられました。

考えてみれば、幸せな家庭だったら
きっと次回も同じ家族や兄弟として
生まれ変わりたいと思ってしまうでしょうから
神になりたいだなんて考えもしないと思うのです。

神への道のりは非常に遠く、
何百年という修行が必要です。

しかも、もともとのエネルギー体が違う訳ですから
まったくの純粋な神にはなれません。

それでもいいから、自分のような人生を歩む人が
一人でも減るようにと彼らは思っているのです。

 

 

 

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そんなことを考えながら
きっと不幸な生い立ちだった
元人間を探すことにしました。

今日から1年を共に過ごす神の候補です。

 

 

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こんなにたくさんある熊手の中でも光っている熊手は
ほとんどありません。

 

特に神候補がのる熊手は少しずつ光り出すため
最初はよくわからないのですが、時間が経過してゆくと
はっきりと光が見えてきます。

 

 

 

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3周ほど周って、なんとなく光り出している
熊手を見つけました。

 

でも、まだよく分からなかったので
もう少しだけ周って見ることにしました。

 

 

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そう言えば、相変わらず一軒だけとても良くないお店があって
そこを通ると胸が気持ちが悪くなるので遠巻きに見ていたのですが
とても流行っていました。

 

 

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ご覧の通り、これほど人がいないのに
そこだけ、いっぱい人がいるのです。

なるほど、ご利益を求める人の心を惹きつけるのだと
どこか感心しながら、同時に残念な気持ちでした。

かと言って、何も言えない訳ですが
そこには黒くて実態がない大きな何かがいて
間違いなく、良くないことになるだろうと思うのですが
きっと財運に効果があるのだと思います。

以前にもお話をさせていただいたのですが
魔のものと、善のものがあったとして
善のものは時間がかかったり、緩やかな効果に対して
魔のものには即効性があります。

しかし結末は違っていて、大きな代償が必要です。

善のものが努力との引き換えだとしたら
魔のものの引き換えは命や病、または波乱、不幸です。

 

なぜ、アメノヒワシノミコトがこれを放置されるのか
詳しく聞いたことはないのですが、
それも人の選択に任せているのかもしれません。

 

 

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だいぶ周ったので、そろそろ良い頃合いだと思い
先ほどの、光りつつあった熊手のところに戻ることにしました。

 

やっぱり光りが強まっておりましたので
ここに何かが降り立つと感じ、買い入れることにしました。

 

その時−。

 

風を感じ、大きな羽音がしてきました。

 

「アメノヒワシノミコトが来られた…」

 

代金を支払い、もう一度、渡殿に戻ると
屋根の上にアメノヒワシノミコトと
みちひめが立っていました。

 

 

 

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amenohiwashinomikoto - 限定非公開22 

 

 

「お久しぶりでございます」

 

『久しぶりじゃのう』

 

「はい」

 

『今宵は人が少ないのう。
寂しい限りじゃあ。
暗いのう…』

 

「はい。
最近は、どの神からも呼ばれなくなりました。
疫病を想ってのことのようです」

 

『悪疫に対して策をこうじねばらぬのぅ…』

 

「はい」

 

 

アメノヒワシノミコトは独り言のように
呟いていました。

何か考え事をしているようにも見えたため
今年はこれだけを話して帰ることにしました。

 

 

「さようなら」

 

 

 

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新しい熊手にのった人はおじいさんでした。

 

 

「お名前は?」

 

『くぼた藩のせんどう村 百姓かへい。
40と1で死にました』

 

「え?」

 

 

この男性はまだ41歳だということでしたが
随分と年寄りに見えました。

 

 

「天明4年に天明の飢饉で餓死しました。
秋田藩の人間です。くぼた藩とも申します。

殿様はさたけ様でございます。

とんでもない飢饉で、悪疫になり、
くぼた藩全体が何万人も死にました。

地獄絵図でした。

病にかかり、食うものなく、
己の死んだ親を焼いて食べようとしました。

が、吐き気がして食べられず、悪疫のために体が駄目になり、
そのまま体が衰弱し、死にました。

これからの世に、悪疫と飢饉をなくすために、
神にお頼みして修行をしております。

神の弟子になりたいと申しましたが、
まだ弟子にはなれずにおります」

 

 

この人がどうして老人に見えたのか
その理由は病と飢餓によるものでした。

痩せていてシワだらけです。

その姿から、壮絶な死に様だったことを悟りました。

これから1年の間、この人が食べ物の呪縛から解き放たれるように
満たされるように、世話をしてゆこうと思いました。

 

 

「帰りましょうか」

 

こうして、今年の酉の市をあとにいたしました。

 

 

 

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